贈与とは、『あげます』、『もらいます』という双方の意思確認によって成立するものです。親がお金を子に『あげたことにしておく』は贈与に該当しません。
これは、よくあるケースですが、子供名義の通帳に親がお金を振り込むことがあります。
親が子供名義の通帳や印鑑を管理するケースや、そのお金の振り込み自体を子が知らないケースがあります。これでは贈与が成立しません。
親に意思能力がなくなってしまった場合、子供が勝手に親の口座からお金を引き出して子供の通帳にお金を入金しても親は『あげます』という意思表示ができないので、これも贈与が成立しません。
このような贈与の不成立の場合と贈与税の時効と混同される方がおられます。何十年前に上記のようなお金の振り込みや移動があっても贈与税の時効は成立しません。なぜなら、贈与自体が成立していないから、いつまでたっても贈与税の時効は成立しません。
そして、贈与が成立していない財産については、例え名義自体が他人(子供や孫等の名義)であっても、元々財産を有していた人の財産とされますので、相続税の申告時には元々の所有者の相続財産となります。
よくある贈与の勘違いとして、贈与契約書を作成すれば良い、贈与税の申告をすれば良いと思われている方がおられます。
贈与契約書は当然、あげる人、もらう人の意思表示を確認できる書類なので贈与という事実を証明するには非常に効果的です。ただし、『贈与契約書がある』という事実だけではなく、きちんとした贈与契約が履行されているかが重要です。例えば、贈与契約のもらった人の署名欄があげた人の筆跡でもらった人は贈与があったことを全く知らない場合等はせっかく『贈与契約書がある』状態であっても贈与の成立要件は満たしません。きちんとした贈与の条件を満たしており、なおかつそれぞれが自署した贈与契約書であれば、贈与の事実を証明するのに非常に有効なものとなります。
贈与税の申告についても同じです。贈与税は暦年で110万円の基礎控除があります。例えば120万円の贈与を行うと、(120万円-110万円)×10%(贈与税率)=1万円(贈与税)となりますので、1万円の贈与税を納付し、贈与税の申告書を税務署に提出します。ここでも、贈与税の申告=(イコール)贈与の成立とはなりません。もちろん、基礎控除を超えて贈与をした場合は贈与税の納税義務がありますが、贈与とはあくまでも、『あげます』、『もらいます』という双方の意思確認が成立したことによって成立しますので、親が子にあげたことにしておいて、親が子の贈与税の申告と納付を済ませても贈与とは認められませんのでご注意ください。